模様 7


10/4 天使の日
「バーナビーくん、頼みがある」
ロッカールームで遭遇したスカイハイさんは妙に身体を縮め、その癖僕に屈むよう要求してきた。何ですか、と一応中腰で聞き返すと、彼は至極真面目な顔で言った。
「先程『スカイハイさんマジ天使』と言われたんだが、彼らの勘違いを訂正してくれないだろうか」
無理です。

10/4 天使の日 2
「やっぱりスカイハイさんって天使だったの!」
ドラゴンキッドさんが大声を上げる。彼女が見ていたのは、ネットに上がった写真だ。天使の日に合わせて、スカイハイさんの背後に作り物の天使の翼を見切れさせた企画。だけどあんまり似合いすぎて都市伝説化した原因が僕だとは言えなくて。
「……御免!」

10/4 天使の日 3
死ぬ時は子供や孫に看取られて穏やかに……ってのは、皆に共通する願いだと思う。まさか墜落死だなんて想像だにするものか。情けなく悲鳴を上げた俺の身体は、意外にもしっかり持ち上げられる。
「わたしが来たからにはもう安心、そして安心だ!」
俺を迎えにきたのは天使じゃなくてスカイハイだった。

10/4 天使の日 4
「スカイハイさんは天使なんだよ!」
「ホントかぁ〜?」
ドラゴンキッドが力説するが、俺は半信半疑だ。何たってあのKOHだぜ? 首を捻っていたら本人がやってきた。
「やあ、」
「よう天使!」
わざと挨拶を遮り皮肉っぽく呼び掛けると、あいつは不思議そうに振り向いた。
「天使?どこに居るんだい?」

10/4 天使の日 5
きょうわ すきな え を かいていいって せんせえが いったので てんしのえを かいたら せんせえが それは すかいはいよ って いいました。
おとうさんも おかあさんも てんしって いってるから てんしだよって せんせえに おしえたら せんせえも そうだねって いいました。

10/1 寂しくて
「それじゃあお邪魔したね、おやすみ、そしておやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
微笑むキースさんを送り出す。玄関先でそう遣り取りをして、彼がこちらに向けた背中を眺めた。寂しいな。思った瞬間、彼が振り返った。
「すまない、今夜は泊めて貰えないだろうか。……寂しくて死にそうなんだ」

9/30 死んでしまいたい
全身が痛む。血と精液の匂いがなまぐさい。ぐったりと横たわり、スカイハイは渾身の力を振り絞って顔を上げた。見上げた夜空は暗く、それすら見る間に涙で滲んだ。
「今この瞬間に、……でしまいたい……」
悲鳴の代わりに零れた囁きを聞く者は居なかった。

4/19 どわすれ
虎徹「(DVDを選びながら)今日は何にすっかなー……おっ、これなんかどうだ」
キース「それは先月観たよ虎徹くん!」
「……い、いいだろ、俺はこれが好きなんだよ」
「うん、わたしも好きだよ。それを観よう!」

4/11 発音しやすい名字
キース「カ……ブ、ラ、ギ……すまない、ちょっと変わった発音だね!」
虎徹「俺の名字読みにくいだろ。せっかくだからおじさんお前の名字使おっかなー」
「いや、君の名字をちゃんと発音できないのはよくない、実によくない! 練習するから待っていてくれ!」
「」

3/29 つかまえた
カーテンの向こう、躊躇いが見慣れた人影となってゆらゆら揺れる。
ソファでビールを飲みながら、ちらりと視線を鳴らない携帯電話に投げかけた。見ていたはずの番組はもはや雑音でしかない。
離れようとした影を追ってカーテンを引く。腕を捕まえたらもう逃げられない。俺に会いにきたんだろ、キース。

3/23 虎空ふぇら
キース「今日はわたしがワイルドくんにしてみたい! そしてしてみたいよ!」
虎徹「あーいや、それはいいから」
「えっどうしてだい?」
「なんかお前うっかり噛みそうだし」
「失礼な! わたしだってきちんと気をつければ……」
「あーわかったわかった、じゃあ頼む」
「お任せあれ!」
(5分後)
「あだっ!」

3/23 虎空ふぇら 2
虎徹「今日は俺がしてやるよ」
キース「え、遠慮しておくよ」
「何でだよ」
「まだ前回の復習が終わってなくて……新しい内容を覚えたらごっちゃになりそうだ」
「えっおま、どこで復習なんてしてんだよ! 誰と?! じゃなくて何と?!」
「秘密、そしてシークレットだよ!」

3/23 虎空ふぇら 3
虎徹「……なあ、やっぱりバナナなのか?」
キース「何のことだい?」
「あー、そのー、……練習相手だよ!」
「練習相手なら昨日はファイヤーくんだったよ!」
「えっ、お、お前あいつともやってんのかよ!」
「? ワイルドくんも戦闘訓練するかい?」
「……お前心臓に悪すぎ」


(09.11.12-09.30.12 +α)


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