模様 4


8/13 ひまわり畑
一面のひまわり畑で、虎徹が浮かない顔をしている。嬉しそうにひとつひとつのひまわりを見上げていたキースが、ふと振り返った。
「どうしたんだい?」
「いや、」
虎徹がはっと我に返って苦笑する。
「何だかお前が紛れちまいそうで。あんまり似てるもんだからさ」

8/6 軍服
「うおっ、お前、軍服なんか着てどうしたんだ」
虎徹の声に、キースは襟元を正しながら滑らかな仕草で振り返った。
「うん、実は捜査を頼まれてね。空母視察の名目で、潜入することになったんだ。一週間ほどシュテルンビルトを留守にするけど、君たちが居れば安心だね」
軍帽をしっかりと被り、朗らかに笑う彼の姿は上から下まで軍服に包まれているというのに、まるでこれからパーティにでも出席するかのような柔らかな雰囲気を纏っている。
「おいおい、お前じゃすぐにバレちまうんじゃないか?」
冗談半分に言った虎徹は、次の瞬間片眉を跳ね上げた。
「問題ない、そしてノープロブレムだ」
軍人特有の、剃刀のような薄い笑みを彼の口許に見て、虎徹は言葉を選べないまま頷いた。
「では、行ってくるよ、ワイルドくん」
ぽん、と肩を叩いて去っていく仕草までもが普段とは違う。彼は以前軍人だったのだろうか。後ろ姿のぴしりと伸びた背中を眺め、彼はどこか懸念にも似た何かを感じていた。

8/4 暑いので
キース「暑いね……虎徹くん……」
虎徹「ストップ」
「えっ」
「暑いから何となくセックスしたくなったとか言うんだろ」
「えっ! どうしてわかったんだい……?」
「正解かよ!」
「正解、そして正解だとも虎徹くん!」
「どわぁっ!」

7/20 イメクラごっこ
バーナビー「スカイハイさん、イメクラごっこしましょう」
キース「イメクラ?」
「スカイハイさんは19世紀の農場の領主で、僕は館のメイドです。僕がお皿を割ったので叱責してください」
「えっ、えっ」
「はい。これが台本です。力いっぱい読み上げてください」

7/20 クズ
バーナビー「いいですか、そこに立ったまま動かずに僕を見ていてください」
キース「了解、そして了解だ! ……バーナビーくん、何故床に座るんだい?」
「いいから、今から言う言葉を繰り返してください。クズ!」
「クズ?」
「もっと強い口調で!」
「クズ!」
「ありがとうございます!!!」
「バーナビーくん、ちょっとこれは……」
「顔は正面を向いて! 斜め45度に見下して! はいもう一回! クズ!」
「クズ!」
「ありがとうございます!!!!!!」

6/18 三島パロ
イワン「また失恋したんですか。やっぱりそうなったんですね」
キース「そんなにいじめないでくれよ……」
「何です、そのジャケットにくっつけてるゴミみたいなのは」
「彼女が去年くれた菫の花だよ」
「そんなもの捨てたらどうですか。ほら」
「あっ……ひ、ひどい」
「怒らないんですか」
「そんな、君はわたしのことを考えてそうしてくれたんだろう。わたしを思い出から自由にしようとして花を踏んだんだね」
「そんなわけないです」
「でも、ありがとう……」
「なんでお礼を言うんですか」
「わたしをきっぱり立ち直らせようとしてくれたんだろう」
「だいたいキースさんには押しが足りません。そんなんじゃ何回恋しても振られるのが関の山ですよ」
「うん……。でもね、それほど言われてもまだ諦めきれないところを見ると、あれは本当の恋だったのだと思うよ」
そしてキースは晴れ晴れとした顔で笑い、イワンはぐっとこみあげるものを堪えて俯いた。本当の恋は彼に苦しみしか齎さない。

6/16 カニカマ
「スカイハイさん、カニカマは蟹じゃないんですよ」
「えっ」
「蟹じゃないんです」
「どう見ても蟹じゃないか!」
「それは蟹に似せて作られてるものなんです」
「イワンくん、そのジョークはあまり面白くないよ?」

6/11 認識の相違
イワン「セックスしましょうキースさん」
キース「NO! そしてYESだ!」
「?! どっちなんですか」
「わたしが誘うまで待っていてくれ!」
「いつですかそれ」
「30分くらい後かな……では、わたしは支度してくるよ」
「えっ」
「? セックスの支度をしてくるよ?」
「えっ」
「えっ」

5/27 スレてる
イワン「あ、キースさんちょっとケツ貸して貰えますか」
キース「? いいよ!」
「そんな簡単にケツ貸すとか言っていいんですか」
「ええと……貸したら返してくれるのかな?」
「ケツは返せるかもしれませんがオプションの処女は使ったらもうなくなるので返せませんね」
「すまない、それはもうないんだ」
「えええええ」
「すまない、そしてすまない」
「え、誰に貸したんですか」
「うーん、誰だろう……」
「わからないんですか」
「顔も名前も知らないからね!」
「……まさか性病とか持ってませんよね」
「定期検診を受けているから大丈夫! そして大丈夫だ!」
「その医師にも貸したりしてませんよね?」
「! よくわかったね!」
「あーーーーなんかもう……いいですとりあえずケツ貸してください」
「オーケーさ!」
「なんというかほんとにデリカシーや羞恥心のかけらもないんですね」
「恥ずかしがる演技をご希望かい?」
「演技なんですか」
「そうだよ。リクエストがあれば嫌がる演技も喜んでいる演技も、それから感じている演技もできるよ!」
「それも演技なんですか」
「ちなみに折紙くんには何か特殊性癖はあるかな?」
「いえ特には……、……もしかしてSMとかもいけるんですか」
「食糞とフィスト以外ならだいたい大丈夫だよ」
「その……5歳の幼女に引っ越しの挨拶をされて引っ越し先を訊いたら売春宿だと回答されたような気分です」
「幼女にそんな真似をさせるだなんて絶対にいけない、そしていけないことだ」
「もののたとえです。……はあ……ごくノーマルなやり方でいいんでケツ貸してください」
「えっ本当にいいのかい? ギャグもアナルパールもローターも緊縛もなしで?」
「すみませんそれ全部コミでお願いします」
「油性サインペンも用意しておいたよ」
「わかりました正の字書きますね……」

(05.27.12-08.13.12)


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